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出張大魔王

出張大魔王

お代官と越後屋日記 1

某有名通信会社のお代官と越後屋のお話の始まり・はじまり

第1話

一度味わった強烈な印象というものは
脳みそのヒダヒダにはさまってしまったかのように
何かの時にぬるりと出てくるものだ。

今から遡ること8年。


お代官様の名前は尾田川成美。
4月に大阪藩からやってきた。
以前は奉行職にあったのだが、色々問題があって
四国藩の代官に格下げとなったのだ。
周りから見るといわゆる普通の左遷であるが、
本人は当初その事にまったく気付いていなかった。

「秘書はおらぬのか?」
「代官の部屋はないのか?」
着任早々、尾田川は言い放った。
「お代官様、その様なものはおりませぬし、部屋もございませぬ」
この地で3年ほど前より総括を勤めている白川主水はそう答えながら
まわりの家来たちの顔を見わたした。
一見、PCの画面を注視して仕事に集中しているようにみえるが
全員の手は完全に止まっており、微かに震えているのを白川は見逃さなかった。
『笑うな!』
心の中でそう叫びながらも白川自身、自らの顔が引きつっていることに気付いていた。
『バカ殿だ』
四国藩の行く末を思うと窓から差しこむ柔らかい春の光すら
皮肉に思えてしまうのであった。

続く>>


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